台湾高雄市在住のダニー・アマゾナス(劉棟)さんは花柄の端切れを用いてリアルな布絵を描くキルト作家です。
今回の【作家紹介 Gallery】では、世界が注目する男子キルト作家、アマゾナスに制作のあれこれを語っていただきました。
自分の作品をキルトと呼んでいいかどうかわかりません。
綿をはさんでキルティングしているわけではなく、伝統のテクニックとは違う作り方をしていると思います。
手法はアップリケですが切りっぱなしの端切れの縁を透明糸のジグザクステッチで縫いつけています。
作りながら各ピースを好きな形に切って土台布に置いて、絵の具のように重ねて作業を進めます。
つまり絵を描いている感覚です。縫い代を折り込んで縫う従来のアップリケとの大きな違いは早くできること。
気に入っているのはあえて切りっぱなしにして絵のような自由さが表現できることです。
自由に想像しながらアップリケすることを優先させているというわけです。
このやり方は五年前に始め、「フリーハンドアップリケ」と名付けました。以来、このスタイルで様々な布絵を描いてきました。
影響を受けているのがイギリスのニット作家でありキルト作家であるケイフ・ファセットの作品やオリジナルの生地に見られる鮮やかな色やパターンです。
ケイフのデザインした豪華で匂い立つ花の生地をバラバラに切って分解し、新たに組み立てることで何か今までと違うものを作り出していると思います。
もともとは油絵を描いていました。布絵に惹かれ取り組むようになった理由はたくさんあります。
まずは美しいプリント生地を使えば油絵では表現できないものが作り出せること。
そして油絵のように筆を洗ったり完成品が乾くのを待つ必要もなく、汚れずにどこにでも持っていけて大きな保管場所もなくてすむことです。
現在は高雄に住んでいますが、その前はニューヨークに長年住み、フラワーデザインのビジネスをしていました。
引退後にはレストランチェーンも経営しましたが、故郷に戻り現在に至っています。
私は台湾生まれですが、もともと私の家族はブラジルに暮らしていました。
子供の頃に父がよく昆虫や植物、花の咲くアマゾンの森林、エデンの園のことを話してくれるのを聞いてワクワクしたものです。
そんな憧れが花屋の職業を選んだ理由ではないかと思いますし、現在の創作のイメージの源にもなっていると感じます。
ニューヨークで花のビジネスを始めた頃につけた店の名は「アマゾナス」でした。
そのうち花屋仲間が私のことをダニー・アマゾナスと呼ぶようになって、一九七九年からその名前で通しています。
キルト時間09号(2017年初冬号)掲載記事