【世界キルト紀行 5】カナダ、プリンスエドワード島 その2

母マーガレット・エセル・ジーンと娘のジョイスはキルト母娘。

キルター世代に大人気の「赤毛のアン」(著者ルーシー・モード・モンゴメリ)の物語の舞台は、カナダの東端に浮かぶ小さな島プリンスエドワード島。「赤毛のアン」には、キルトが登場する場面が多くあるが、今のプリンスエドワード島でも、キルトが盛んに作られている。今回は、島のキルター、ジョイス・ドイルさんにお話を聞いた。

撮影: Wayne Barrett 取材:市川直美
取材協力:カナダ観光局 プリンスエドワード島観光局

「プリンスエドワード島ってどんなところ?」
アトランティック・カナダ4州のひとつ。ゆりかごのような形をしていることから、先住民ミックマック族の言葉で「波間に浮かぶ揺りかご」(アベグウェイト)と呼ばれていた。現在の人口は約14万人。特産はジャガイモ。「赤毛のアン」の著者モンゴメリは、スコットランドとイギリスからの移民の子孫として1874年に島で生まれる。

島の五世代キルター

ジョイス・ドイル(シャーロットタウン)

 プリンスエドワード島では今も昔もキルト作りが盛んだから代々キルターという家系もとても多い。ジョイス・ドイルもそんな一人である。本人の腕前も大したものだが二人の祖母、曽祖母はその上をゆく名人だったし、さらに娘のシェールもまさにキルターの仲間入りをしたところだ。

ジョイスは五世代キルターなのだ。現在九十五歳になる母、マーガレット・エセル・ジーンは今から二十年前にキルト作りを止めるまで実にたくさんのキルトを作り上げた。ジョイスが子供のころは家中にキルトがあり、それらは伝統デザインの「ログキャビン」や「スター」などのパターンだったが、ブロック一枚がとても大きかったそうだ。現在、高齢のマーガレットは家族と離れナーサリーホームで暮らしていて時々、娘のジョイスに昔のキルト作りの思い出を語るそうで、実際に作ることはなくなったが、常に人生とともにキルトがあったことを知らされるとジョイスは言う。

そのマーガレットがキルトを私たちに見せてくれるという。市内のナーサリーホームを訪ねると、可愛らしいピンクの「ボンネットガール」のアップリケキルトを広げて待っていてくれた。一九五〇年ごろに作ったそうだがほとんど汚れがなく美しい色を保っている。「きれいなキルトですね」と伝えるととても嬉しそうだ。

現在ジョイスと娘のシェールが母のキルト作りを受けついで、ともにせっせと縫っている。五世代キルターのうち現在は二人しかキルトを作っていないが、これから五世代が六世代になってずっとずっと未来につなげることが夢だ。「赤毛のアン」の島で確かにキルトは手から手へと受け継がれている。

娘のシェール(右)は現在キルトに夢中。

ジョイスが両親の人生を描いた記念キルト。

※よみうりキルト時間1号(2016年発行)の掲載記事より

 

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