アメリカでは新しい感覚でキルトを作る人々が次々と登場していて先輩キルターも関心を寄せている。
今回ご紹介するのは中でも特に注目を集めている一人、キャロライン・フリードランダーである。フロリダ育ち。本人の表現を借りれば「サボテンと馬とともに自然の中で育ち」、セントルイスの大学で建築を専攻した。卒業後に当然のように建築の仕事に就くが、何かもっと幅広く創造的で、手を使う仕事がしたいという気持ちが湧いてきてたどり着いたのがキルトという表現方法だった。
ずっと前から絵画とソーイングを好んだ。母がハワイアンキルトを作っていることもあり、キルトは身近なものだった。キャロラインが向かったのは伝統的なアメリカンキルトでありながら、明るくモダンで清々しいデザインだった。
建築の専門家であることからキルトの伝統パターンの「ハウス」に惹かれる。彼女曰く「フロリダの景色にセントルイスの建物や歴史を合わせた」独自の「ハウス」を次第に生み出していく。そのデザインは建築物のシェイプをそっくり映すのではなく、四角いブロックにピーシングでハウスが収まるようにデザインし直し、縫いやすさも考慮して線を引き直したもの。それまでに見たことのないクリーンな色を配した「ハウス」のキルトが生まれていった。
彼女の「ハウス」キルトが大注目を集めたのは、二〇一三年にアメリカで開催されたモダンキルトの祭典、キルトコン第一回目の会場だった。ある生地メーカーのコーナーにその年のテーマ「黄色」を多用した若手作家たちのキルトがズラリと展示されていた。そこにあったのがキャロラインの「ハウス」のキルトだった( 写真7)。昔ながらの「ハウス」ではなくモダン建築やレトロモダンの雰囲気漂う「ハウス」が、黄色いストリートに建っていて驚かされた。生地のセレクションは青や茶、ストライプやチェックに北欧風の柄。しかも屋根は淡い色。その作品に多くの人が驚いた。それはアメリカンキルトの伝統パターン「ハウス」が新時代の新境地に入った瞬間でもあった。
今では定期的な生地のデザインや展示や講習会の仕事で、多忙な身となったキャロラインだが、リサイクルやリユースの考え方に時々立ち返って、ものを作る初心を思い出すようにしている。
現在キャロラインが推し進めているのが「スローソーイング」という考え方。結果だけを目指して縫う事よりもその過程の時間にこそ価値があるという手縫いの勧め。それは本来のアメリカンキルトの根っこにある軸にスッと繋がっていて興味深い。
キャロライン・フリードランダー Webサイト
https://carolynfriedlander.com/